夜勤者の話・第3話:退院した患者が、もう一度来た日

約3分
夜勤者の話・第3話:退院した患者が、もう一度来た日
目次
  1. 退院から3週間後
  2. ナースステーションでの会話
  3. Mさんが聞いた
  4. Sさんからの手紙
  5. 第4話に続く
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看護師のMさん(仮名・40代女性)から届いた『夜勤者の話』第3話。第2話で『奥の部屋』に入って、明け方に血圧が異常になっていた患者の、退院後の話。

管理人としては、第1話・第2話で出てきた『奥の部屋』を、Mさん自身がどう扱っているか、というのが今回の取材で最も気になっていた部分だった。

退院から3週間後

第2話の患者(仮名Sさん・60代女性・脳梗塞後のリハビリ入院)は、奥の部屋での一夜の後、特に大きな問題なく退院した。担当医も「血圧の異常は一時的なもの」として処理した。退院は予定通りだった。

Mさんは、Sさんが退院する日にも夜勤に入っていて、Sさんから「お世話になりました」と挨拶された。Sさんはその時、奥の部屋での体験について何も言わなかった。Mさん側からも聞かなかった。

退院から3週間後、Sさんが病棟に再来した。外来診察日に合わせて、退院後の挨拶のために寄った形だった。手土産を持っていた。

ナースステーションでの会話

Sさんは、ナースステーションで看護師数名と話した。Mさんも夜勤明けで、その場にいた。

会話の中で、Sさんは唐突に「あの部屋、もう一回入ってみたいんですけど」と言った。

看護師たちは少し戸惑った。「あの部屋」が何を指すのか、その場の数名は分かっていた。Mさんも分かった。

師長が「どうしてですか?」と聞き返した。Sさんは「気になっていることがあって」と答えた。それ以上は説明しなかった。

師長は「外来の患者さんを病棟に通すことはできないので」と断った。Sさんは「分かりました」と素直に受け入れて、その日は帰った。

Mさんが聞いた

Sさんが帰った後、Mさんは師長に「何のことか分かりますか?」と聞いた。師長は「あなたの方が分かるんじゃない?」と返した。

師長は、奥の部屋の話を、ある程度知っていた。長く勤務している看護師の間では、その部屋について何かしらの認識がある、というのは第1話で書いた通り。

Mさんは、自分が夜勤で奥の部屋にSさんを案内した経緯と、明け方の血圧異常について、師長に共有していた。師長は当時「報告は上げなくていい」と言った。今回も、師長は「上げない」という判断のままだった。

Sさんからの手紙

その2週間後、Mさんに病院宛てで手紙が届いた。差出人はSさん。

手紙は短いものだった。退院時にお世話になったことへのお礼、外来の挨拶での非常識な発言への謝罪、そして「あの夜、見たものについて、書ける範囲で書きました」という一文。

同封の便箋に、Sさんの体験が書かれていた。Mさんは、その内容を読んで、しばらく職場で誰にも話さなかった。

第4話に続く

Mさんから届いた今回の取材記録は、ここで一旦区切られている。Sさんの手紙の内容については、Mさんと管理人の間で、掲載の可否を含めて、もう一度確認することになった。

掲載の判断が付き次第、第4話として続きを記録する予定。Sさん本人の同意確認を含めて、慎重に進める。

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