福島・二ツ小屋隧道、同じ構図の三枚のうち二枚目だけに人が写った話
Hさん(仮名・36歳男性・東北在住、廃道と隧道めぐりが趣味)からメールで届いた話。メールで6往復ほど追加取材させてもらった。仮名を条件に承諾をいただいている。場所は本人の希望で実名のまま掲載している。
福島の二ツ小屋隧道です。心霊スポットとして名前が出る場所なんで、そういう話を期待されると外すと思います。
先に説明しておきます。
二ツ小屋隧道は、旧国道十三号の廃隧道です。福島と山形をつなぐ万世大路の一部で、明治に開かれた道。今の国道は別のルートを通ってて、旧道は車両通行止めになってます。
隧道自体は残ってます。素掘りに近い区間と、コンクリートで巻いた区間が混ざってる。中は水が流れてて、夏でも冷えます。
僕はここへ、五年で七回行ってます。
廃道が好きなだけです。心霊目的で行ったことはありません。行くのは日中で、装備はヘッドランプと長靴、それと一眼。
去年の十月に行ったときの話です。
午前に入りました。連れはいません。単独で入るのはいつも通りで、家族には行き先を伝えてます。
坑口の手前で、三脚を立てました。
坑口を正面から撮るのが好きなんで、毎回同じ位置から撮ってます。過去の写真と比べると、崩れの進みが分かるんで。
そのとき、中から音がしました。
水の音とは別です。硬いものが石に当たる音が、二回。金属っぽい響きでした。
人がいるんだと思いました。
ここは有名なんで、日中でも人が来ます。廃道好きも来るし、肝試しで来る人もいる。同好の人なら挨拶するし、そうでなければ距離を取る。それだけの判断です。
声をかけました。
返事はありませんでした。
そのまま入りました。中はまっすぐで、見通しが利く区間が長いです。ヘッドランプの光は、五十メートルくらい先まで届きます。
誰もいませんでした。
反対側の坑口まで歩いて、外に出ました。抜けた先も廃道で、車は入れません。人がいれば足跡か何か残るんですけど、地面は落ち葉と泥で、判断できませんでした。
戻りながら、音の場所を探しました。
中ほどに、コンクリートの巻きが剥がれてる箇所があります。鉄筋が出てて、水が滴ってる。滴が鉄筋に当たれば、金属の音は出ると思います。
それで説明はつきました。
問題は写真のほうです。
帰って現像しました。坑口の正面から、いつもと同じ構図で三枚。
二枚目に、坑口の内側に人が写ってました。
隧道の入り口から五、六メートル入ったあたり。立ってる形で、腰から上だけが明るく出てます。下は暗くて分かりません。輪郭はぼやけてますけど、頭と肩の形は取れます。
一枚目と三枚目には、写ってません。
三枚は連続で撮ってます。時間はほとんど空いてないはずです。
露出を疑いました。
坑口の撮影はいつも難しくて、外が明るいと中が落ちます。逆に中に露出を合わせると外が飛ぶ。二枚目は少し明るく撮ってました。だから中の何かが浮いただけ、という説明はできます。
写ってるものが何かは、分かりません。
壁の剥がれか、置かれたものか。あの日、中に人はいませんでした。ただ僕が見た範囲にいなかっただけで、横穴に入ってた可能性もあります。二ツ小屋には待避所みたいな窪みがあるんで。
同じ構図の過去の写真も全部見ました。
五年ぶん、七回の分です。同じ位置に何か写ってるものは、他にありませんでした。
今年もまた行くつもりです。
同じ位置から、同じ構図で撮ります。二枚目だけ明るめに撮って、比べてみるつもりでいます。
それで写れば、露出の話で終わります。