地元の踏切に四番が無い噂、古い航空写真だけ話が合わない
Yさん(仮名・29歳男性・地方私鉄の沿線で育ち、現在は同じ県内で工場勤務)からサイトの投稿フォームで届いた話。メールで6往復ほど追加取材させてもらった。仮名と路線名を伏せる条件で承諾をいただいている。
地元に昔からある噂の話です。怖い話なのかは分かりません。ただ調べたら噂と違うものが出てきたんで、送ってみました。
うちの近所を走ってるのは、二両編成の私鉄です。単線で、駅と駅のあいだに踏切がいくつもある。
踏切には番号標が付いてます。四角い板に、路線の略称と番号。
僕が中学の頃から言われてたのは、四番の踏切が無い、という話でした。
四は縁起が悪いから飛ばした。だから四番を探すと見つからない。見つけた人は帰ってこられない。そういう言い方をされてました。
半分は作り話だと思ってました。番号を飛ばすなんて、どこの会社でもやりそうなことなんで。
去年の秋、暇な休みに自転車で確認してみたんです。
駅から順に、番号標を写真に撮っていきました。一番、二番、三番。ここまでは五分くらいの距離に並んでます。
次が五番でした。
三番と五番のあいだは、線路沿いに三百メートルくらい。畑と、用水路と、農道が一本。踏切らしいものは何も無いです。舗装の跡も、遮断機の土台も見当たりません。
やっぱり欠番か、と思って、それで終わりにするつもりでした。
気になったんで、鉄道会社に問い合わせのメールを出しました。
返事は一週間くらいで来ました。四番は開業当時から欠番、記録上も設置されたことはない、との内容。丁寧な文面で、担当者の名前も入ってました。
そこで納得すればよかったんですけど。
うちの県は、国土地理院の古い航空写真をネットで見られます。仕事で図面を触るんで、そういうのは前から知ってました。
昭和三十年代の写真を開いて、三番と五番のあいだを拡大しました。
農道が線路を横切ってます。
白い線が二本、線路をまたいで直角に伸びてる。両側に小さい四角が写ってて、遮断機か柵の類だと思います。今の写真だと、その農道は線路の手前で途切れてる。
同じ場所を、年代を変えて何枚か見ました。昭和四十年代の写真にも横切る道がある。五十年代でもう無い。
つまり、あったものが無くなってる。
会社の返事とは合いません。ただ会社が嘘を書く理由も無いんで、単に古い記録が残ってないだけだと思います。踏切を廃止した書類が抜けてるとか、そういう事務的な話じゃないかと。
現地にもう一度行きました。
航空写真から場所を割り出して、用水路の橋のあたりを歩きました。草をかき分けたら、コンクリートの塊が二つ、線路と平行に埋まってました。上の面が平らで、真ん中に穴が空いてる。
何かを立てた跡だとは思います。それが遮断機かどうかは、僕には判断できません。
近所の年寄りに聞いてみました。
八十代の人が、あのへんは昔渡れた、と言ってました。学校の近道だったそうです。いつ渡れなくなったかは覚えてない、との返事。
四番だったかどうかも聞きました。
番号は見てない、と言われました。子供のころに番号標なんて誰も見ないんで、それはそうだと思います。
噂のほうは、今も残ってます。
去年、近所の子が同じことを言ってるのを聞きました。四番の踏切を探すと帰れない、と。僕が中学の頃と同じ言い方でした。
誰から誰に伝わってるのかは分かりません。
写真はまだ持ってます。番号標の一番から五番まで、順番に並べたやつ。四番のところだけ、畑の写真が入ってます。
そこには何も写ってません。