実家の仏間、年に一度だけ蝋燭が独りで灯る話

約4分
実家の仏間、年に一度だけ蝋燭が独りで灯る話
目次
  1. 実家の仏間
  2. 最初に気付いた朝
  3. 2年目、同じ日付
  4. 3年目以降、9月17日の朝に必ず
  5. 祖母の話
  6. 祖母にしか分からないこと
  7. 8年連続、変わらず
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Sさん(仮名・47歳女性・島根県在住の薬剤師)から届いた話。年に一度、特定の日付の朝に、誰も火をつけていない仏壇の蝋燭が独りで灯っている経緯。8年連続で観察を続けている。

実家の仏間

Sさんの実家は島根県内の戸建て住宅、築60年。両親と祖母(85歳)が現在も同居している。仏壇は仏間の正面に設置されていて、Sさんが子供の頃から、毎日朝と夕方に祖母が手を合わせていた。
仏壇には2本の蝋燭が立てられている。普段は火を点けず、お盆と命日にだけ祖母が点ける習慣だった。

最初に気付いた朝

8年前の9月17日の朝、Sさんが実家に帰省していた時のこと。母に呼ばれて仏間に行くと、左側の蝋燭が静かに燃えていた。
「『今日、誰か火を点けた?』と母に聞きました。母は『私は点けていない。お祖母さんも、まだ起きていない時間だから点けていないはず』と」

祖母を起こして確認したが、祖母も「点けた覚えはない」と答えた。父は早朝に畑へ出ていたが、家を出る時には蝋燭は点いていなかった、と。

2年目、同じ日付

翌年の9月17日、Sさんはわざと早朝5時に起きて仏間を確認した。
蝋燭は、その時点では点いていなかった。Sさんは台所で朝食の準備を始めた。30分後、仏間を再度確認すると、左側の蝋燭が点いていた。

「家族の誰も仏間に入っていない30分間です。私は台所、母は2階で着替え中、祖母はまだ寝ていた」
父はその日、農協の会合で前夜から泊まりがけで出ていた。

3年目以降、9月17日の朝に必ず

3年目以降、Sさんは毎年9月17日の前夜から実家に泊まるようになった。父にも事情を話し、家族で『今年も来るか』を確認する習慣ができた。
毎年、同じ日の朝、左側の蝋燭が独りで灯る。点く時刻は毎年6時前後で、ほぼ揃っている。

祖母の話

Sさんが3年目の朝、祖母に率直に聞いた。『9月17日に何かあった日ですか』と。
祖母はしばらく黙ってから話した。「9月17日は、私の父、あなたのひいおじいさんが、戦地で亡くなった日。報せが届いたのは1ヶ月後だったけど、後で正式な戦没日として記録された日付がこの日」

曽祖父は太平洋戦争中、南方戦線で戦死。Sさんの祖母は当時5歳で、父親の顔をほとんど覚えていない、と話していた。
「『私が嫁いだあとも、9月17日には父さんを思い出して、ひとりで手を合わせていた。でも、蝋燭が独りで点くようになったのは、Sさんが帰省してきたあの年からだよ』と」

祖母にしか分からないこと

Sさんは、祖母に「なぜ私が帰省した年から始まったのか」と聞いた。
祖母は「分からない。ただ、Sさんが薬剤師になってから、最初に実家でゆっくり過ごしたのが、あの年の9月だった。たぶん、父さんが孫を見にきていたのかもしれないね」と答えた。

Sさんは曽祖父の顔写真を見たことがなかった。祖母が遺品の中から、若い軍服姿の曽祖父の写真を出してきて、「これがあなたのひいおじいさんだよ」と見せてくれた、と。

8年連続、変わらず

それから8年連続、9月17日の朝に必ず左側の蝋燭が灯っている。蝋燭は2本立っているが、右側が灯ったことは一度もない。
「家族の中では『今年もひいおじいちゃんが来てくれた』として、自然に受け入れています。怖がる人は、家族の中にいません」

Sさんは現在、毎年9月17日に必ず帰省して、仏間で曽祖父に挨拶することを習慣にしている。
「来年も、たぶん点くと思います。8年来てくれた人が、急に来なくなる気がしないので」

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