高校時代、屋上の扉が朝だけ開いていた話
Mさん(仮名・34歳女性・栃木県の塾講師)から届いた話。高校1年の冬、Mさんが通っていた公立高校の屋上の扉が、毎朝7時過ぎに開いていた経緯。
早朝登校、人気のない4階廊下
Mさんは、高校時代、ブラスバンド部に入っていた。朝練のために、毎朝7時前に学校に着く生活。
校舎は4階建て、ブラスバンドの部室は4階の音楽室。部員は7時15分に部室に集まる。Mさんはいつも、その15分前、7時に到着していた。
最初に気付いた、扉の開閉音
高1の12月の月曜日。Mさんが4階廊下を歩いていると、屋上の扉のほうから、金属のきしむ音がした。
「鉄製の扉が、ゆっくり閉まる音でした。屋上に行く階段の踊り場、扉のすぐ下まで行ったら、まだ少し開いていて、外の冷たい風が降りてきていた」
Mさんは、扉を完全に閉じた。屋上の鍵は職員室管理、生徒が勝手に行ける場所ではない。
翌日も、翌々日も、同じ時間
翌日も、Mさんが7時過ぎに4階に着くと、屋上の扉が少し開いていた。翌々日も、同じ。
「最初の3日間は、誰か朝練の先生が早く来て、屋上で煙草でも吸っているのか、と思っていました」
Mさんはブラスバンドの顧問に、屋上に行く先生がいないか聞いた。顧問は「鍵は職員室で、朝の鍵当番が管理している。早朝に屋上に上がる先生は、聞いたことがない」と答えた。
鍵当番の教員に確認
Mさんは、その週の鍵当番だった世界史の先生に、直接聞いた。
「『屋上の鍵を朝7時前に貸し出した記録はない』と。職員室の鍵管理帳を一緒に見せてもらいましたが、その週は、屋上の鍵は一度も貸し出されていなかった」
世界史の先生は、Mさんの話を最後まで聞いた後、「それは、たぶん、開けてはいないんだろう」とだけ言った。
2週間続いた、毎朝の扉
12月の2週間、Mさんが7時過ぎに4階に着くと、屋上の扉は必ず少し開いていた。Mさんは毎回、扉を閉めた。
「3回目以降は、慣れてしまって。怖さよりも、誰がやっているんだろう、という疑問のほうが大きかったです」
ブラスバンドの他の部員に話しても、皆7時15分以降の到着なので、扉が開いている瞬間を見たことがなかった。
冬休み明け、扉は閉じていた
2学期最後の週、Mさんは2日間休んだ。冬休みに入る前の最終日に登校した時、屋上の扉は完全に閉じていた。
冬休み明けの1月、Mさんが3学期の朝練を始めた。屋上の扉は、もう開いていなかった。
「12月の2週間だけ、何かが起きていた。何だったのかは、今でも分かりません」
高2に進級、卒業まで一度もなかった
Mさんは高2に進級。同じブラスバンド部、同じ朝練の時間。屋上の扉は、卒業まで一度も開いていなかった。
「世界史の先生が『開けてはいないんだろう』と言った時の表情だけ、今でも覚えています。何かを知っている人の顔ではなく、ただ、私の話を真面目に受け取ってくれた人の顔でした」