嫁いだ先の納屋に、開けてはいけない木箱がある話
A1さん(仮名・34歳女性・佐賀県在住)から届いた話。嫁いだ先の農家の納屋にある『開けてはいけない木箱』について、義父から1年経って初めて聞いた話の経緯。
結婚2年目、義父からの話
A1さんは、結婚2年目に夫の実家(佐賀県の農家)で同居を始めた。家は築120年、母屋とは別の場所に古い納屋。
同居して1年経った頃、義父(70代)がA1さんに、納屋の中の話を初めてした。
『あの木箱は開けるな』
義父の話:『納屋の奥に、古い木箱がある。私の祖父の代から、開けてはいけないと言われている。理由は、誰も知らない。私も、私の父も、開けたことはない』
A1さんは、結婚2年目で初めてそれを聞いた。それまで、納屋に何が置いてあるか、誰も話してくれなかった。
A1さんが納屋を覗いた
A1さんは、義父に断った上で、納屋の中を確認した。
納屋は10畳ほどの広さ、農具と古い家具が積まれている。奥の壁際に、古い木箱が一つ。蓋の上に紙が貼ってあって、墨で『開けるな』と書かれていた。
『開けるな』の文字、誰が書いたか
A1さんは義父に、その『開けるな』の文字を誰が書いたか聞いた。
義父:『私の祖父の祖父が書いた、と聞いている。明治時代のものだ。墨で何度も書き直されている』
つまり、120年以上、世代を超えて『開けるな』が書き続けられてきた、ということになる。
夫も知らなかった
A1さんが夫に、納屋の木箱の話を聞いた。
夫は『なんとなく知ってる、開けるな、と父から子どもの頃に言われた』と答えた。中身は、夫も知らなかった。
子どもが生まれて、5年
A1さんが結婚してから10年、子どもが2人生まれた。子どもたちにも、義父は『納屋の奥は触るな』と教えていた。
「家族の中で、納屋の奥が『触らない場所』として共有されている、ただそれだけの状態が続いています」
義父の入院、最後の話
今年、義父が体調を崩して入院した。A1さんが病院で世話をしている時、義父が改めて言った。
『俺が死んでも、あの木箱だけは、絶対に開けるな。中身を知らないまま、納屋ごと残しておいてくれ』
A1さんは『はい』とだけ答えた。
結婚10年目、納屋は変わらず
A1さんが結婚してから10年。納屋の木箱は、結婚した日と同じ位置、同じ蓋の紙、同じ『開けるな』の文字。
「家族の誰も中身を知らない、何が入っているかも分からない、ただ『開けない』だけが約束として続いています。それで、いいんだと、今は思っています」