夫の実家の納戸、義母から『絶対に開けないで』と聞かされた箱の話
Mさん(仮名・36歳女性・千葉県在住の会社員)から届いた話。結婚10年目で初めて夫の東北地方の実家に長期滞在した際、義母から納戸にある特定の木箱について『絶対に開けないで』と説明された経緯。義祖母(93歳・存命)の代から続く家のルール。
管理人としては、嫁ぎ先の家系で受け継がれる暗黙のルールに関する話は判断が難しい類型で、Mさんからの取材は1年かけて3回に分けて聞かせていただいた。家系のプライバシーに配慮して、地名と家名はすべて伏字にしている。
結婚10年目の長期滞在
Mさんは35歳、夫は同い年。結婚して10年、夫の東北地方の実家には盆暮れに数日泊まる程度の関係だった。
結婚10年目の夏、義父が体調を崩して入院し、義母から「しばらく家に来てくれないか」と依頼があった。Mさんは仕事の休暇を取り、夫と一緒に2週間、夫の実家に滞在することになった。
義母からの説明
滞在初日の夜、義母(68歳)から家の中を案内された。1階の客間、台所、お風呂、2階の各部屋、屋根裏に近い納戸。
納戸の説明の時、義母は声のトーンを少し落とした。「ここは普段使わない部屋なんだけど、Mさんに一つだけお願いがあるの」
納戸の奥に、古い木箱が一つ置かれていた。サイズはみかん箱より少し大きい、漆塗りに似た古い箱。蓋には縄が二重に巻かれていて、明らかに『開けない前提』の状態。
『絶対に開けないで』
義母は箱を指して言った。「この箱は、絶対に開けないで。掃除する時も、触らないでいい。家の中で、これだけは家のルールなの」
Mさんは「何が入っているんですか」と聞いた。義母は「私も知らない。私の母(義祖母)から『開けない』とだけ言われている。母も、その母から同じことを聞いて引き継いだ、と」
義母によると、家系の女性の中で、家を継ぐ立場の者が代々『開けない』ことを引き継いできた、と。
夫に確認
その夜、Mさんは夫に聞いた。夫は「あの箱のこと? 俺も知らない。母さんが言うから、子供の頃から触ったことがない」と。
「夫の姉(既婚・他県在住)にも電話で聞いてもらいました。姉も『開けるなとだけ聞いている。中身は知らない』と。家の女性の間で、3世代にわたって引き継がれている話のようです」
義祖母への確認
滞在中、Mさんは義祖母(93歳・施設入所中)にも会いに行った。義祖母は耳が遠かったが、頭ははっきりしていて、若い嫁の質問に丁寧に答えてくれた。
『あの箱はね、私が嫁いだ時、当時の姑さんから引き継いだもの。姑さんも、その姑さんから引き継いだと言っていた。中身は誰も見ていない。開けるな、というのが家の決まりです』
義祖母は最後に「Mさん、あなたが家にいる間は、私もまだ生きていますからね。私が亡くなったあと、あの箱をどうするかは、義母さんとよく相談してください」と話した。
1年後、Mさんの判断
2週間の滞在から千葉に戻ったあと、Mさんは何度かその箱のことを考えた。開けてしまえば、何かが分かるかもしれない。
「でも、3世代にわたって引き継がれた約束を、私の代で破る理由がない、と気付きました。義祖母が話してくれた『私が亡くなったあと』という言葉が、判断の基準になっています」
Mさんは現在も、年に数回夫の実家を訪れている。納戸の前を通る時、箱の存在を意識する。ただし、開けるという選択は、現在も保留したまま。
義祖母の現状
義祖母は93歳になっても比較的元気で、施設で過ごしている。義母は週に2回、施設を訪ねている。
「義母から最近聞いた話では、義祖母が『あの箱のことを、義母さんに正式に話す日を、いつか作る』と話しているそうです。私はまだ、その『話』を聞く立場ではありません」
Mさんは、義祖母が亡くなる前に、家系の女性の中で何かが決まる可能性がある、と感じている、と。