看護学校で先輩から聞いてた話

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看護学校で先輩から聞いてた話
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Nさん(仮名・34歳女性・関東の総合病院で看護師)の話。以前別件の取材でお会いした方で、DMで4往復ほどあらためて伺った。仮名と地名ぼかし条件で承諾をいただいている。

これは私が看護学校に通ってた頃から、代々先輩に教えられてた話なんですけど。

私はいま28で、関東の中規模の総合病院で病棟看護師をしてます。経験は5年目で、ようやく後輩がついてきたところ。

看護学校は地元の専門学校に3年通って、21の春に資格を取りました。

実習は2年生の後半から本格的に始まって、いくつかの病院を回るんですけど、その中でメインの実習先になっていたのが、いまの勤務先とは別の、地元の中規模病院。

その病院は本館と東館の2棟構成で、東館の方が古い建物。

実習生はだいたい東館の3階の混合病棟に配置されることが多くて、私もその病棟で長い実習を1回受けてます。

先輩というのは、看護学校の2つ3つ上の代の人たち。合同実習の打ち上げや、サークルの追いコンで、よく実習先の話を聞かせてくれる人たちでした。

その先輩たちから、2年生のときに最初に言われたのが、東館3階の7号室の話なんです。

7は4床部屋。窓際の1床、廊下から見て右奥のベッドに、年配の男性がいることがある、と先輩は言ってました。

実習中の見回りや受け持ちの記録のために部屋に入ると、いるはずのない患者さんが布団をかけて寝ている、というだけの話。

声はかけない、体に触れない、指導者にだけあとで報告する、と。

報告しても指導者は「ああ」と言うだけで、それ以上は何も説明してくれないらしいです。

先輩の話だと、自分の代も、その上の代も、さらに上の代も、毎年の実習で誰かが必ず1回は見てる、ということなんです。

見つかるのは決まって、受け持ち患者の入れ替わりの時期。

退院や入院の動きで看護師の意識が抜ける瞬間に、その窓際の1床が動く、と。

先輩自身も2年生の実習で見たと言ってました。布団の盛り上がりと、枕の上の白髪と、薄い肩のラインだけを覚えてる、と話してくれました。

看護学校では、その手の話は新しい代に必ず伝えられる決まりみたいなもの。

怖がらせるためというより、業務として混乱しないように、という意味合いの方が強かったと思います。

実習中にいないはずの患者を見ても、声をかけずに、まず指導者に確認に行く。

これは7だけじゃなく、医療現場全般のルールとしても自然な動き。新人にとってもそんなに違和感のある教え方ではありません。

私自身は、3年生の実習で東館3階に入ったときに、一度だけ薄い経験をしてます。

深夜帯のラウンドの同行で、指導者の主任さんと一緒に7のドアを開けた瞬間、窓際のベッドのナースコールのランプが点いたんです。

点いたと思った次の瞬間にすっと消えて、コール履歴にも残ってない。

主任さんは私の方を見て、いまの見えた、と聞いてきました。

私は、はい、と答えたと思います。それ以上は何も言わずに、主任さんは次の部屋へ。

私が7で見たのはそれだけ。布団の中の人までは見ていません。

同じ実習班だった同級生のうち、2人は窓際のベッドの盛り上がりを見たと言ってるんです。

1人は受け持ちの記録を取りに昼間に入ったときで、もう1人は朝のおむつ交換の準備で入ったとき、と。

どちらも、声はかけずに退室して、指導者に伝えたそうです。指導者の反応は、私が聞いた時と同じ。ああ、とだけ言って次の指示に移った、と聞きました。

看護学校を卒業してから、私は別の病院に就職したので、東館3階のその後がどうなってるかは直接は知りません。

卒業後の同窓会で、後輩の代の子たちにも一応聞いてみたんですけど、7の話はいまも続いてるらしくて。

私の2つ下の代も、4つ下の代も、それぞれ誰かが見てる、と言ってるそうです。

話の内容は私たちの代と同じ。年配の男性、窓際、白髪、布団の盛り上がり、声はかけない、というところまで揃ってるそうです。

面白いというと変なんですけど、いまの勤務先でも、似た話は聞きます。

うちの病棟でも、特定の病室の特定のベッドで、申し送りに載っていない患者を見たという話が、年に1回か2回、誰かから出ます。

先輩の看護師は、ああ、あの部屋ね、と言うだけで、深く取り合わない。

新人の頃の私と同じで、新しく入った後輩は、そういうものなのかな、と一度受け止めて、業務に戻ります。

看護師の間では、こういう話はそんなに珍しくないらしいです。

同期の集まりで他の病院の話を聞いても、必ずどこかの病棟に、似た位置のベッド、似た年代の患者、似た輪郭の話が1つずつ。

先輩から後輩に、業務上の注意として淡々と伝えられている、というところまで共通してます。

私はあの7のベッドにいたのが誰なのかは、いまも知りません。

記録を見る権限ももうないし、見たいとも思わない。

看護学校の代々の先輩たちが、それぞれの実習で見て、それぞれの後輩に伝えて、いまもどこかで続いている。その事実だけが、自分の中に残ってます。

勤務先でその手の話を聞くたびに、ああ、ここでも代々続いてるんだな、と思うだけ。特別に怖いとは思いません。

慣れた、というよりは、業務の中にそういう枠が1つある、という感覚に近いと思います。

こっちにも、もうひとつ

地元の田舎道にある古い自販機の話

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