山あいの廃校の音楽室で、誰もいないのにオルガンが鳴り、鍵盤の埃に指の跡が増えていた話

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山あいの廃校の音楽室で、誰もいないのにオルガンが鳴り、鍵盤の埃に指の跡が増えていた話
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Tさん(仮名・35歳男性・会社員)から、サイトの投稿フォームで届いた話。当時は大学生で、十五年ほど前の出来事だという。場所が特定されると困るとのことで、地域も学校名も伏せる条件で承諾をいただいた。

これは自分が大学二年のとき、友達と廃校に行ったときの話です。

当時、自分は山あいの町の大学に通っていた。車で少し走ると、もう田んぼと山しかない。

その町に、何年か前に閉まった小学校があるという噂を、サークルの先輩から聞きました。

児童が減って統合になったらしくて、建物だけがそのまま残っている。鍵もかかっていない、という話でした。

肝試しに行こう、と言い出したのは友達のほうです。自分は正直、あまり乗り気じゃなかった。

ただ、その夏は暇で、ほかにやることもなくて。結局、男四人で行くことになりました。

夜の十一時くらいに、友達の車で出発しました。コンビニで飲み物だけ買って、あとは地図を頼りに山のほうへ。

着いたのは、たぶん日付が変わるころでした。

木造の、古い校舎でした。二階建てで、思っていたより大きい。門の柱だけが残っていて、校庭は草で埋まっていました。

懐中電灯を二本だけ持って、四人で中に入りました。

昇降口の靴箱は、半分くらい扉が外れていて、床は埃と落ち葉でざらざらしていた。

自分たちは、ふざけ半分で廊下を歩きました。教室をのぞいたり、黒板に何か書いてあるのを読んだり。

正直、出だしは普通の探検みたいで、そんなに怖くなかったんです。

おかしくなったのは、二階に上がってからでした。

二階の奥に、音楽室がありました。扉の上に、木の札で音楽室と書いてあった。

中に入ると、ほかの教室より埃が厚くて、空気が重い感じがしました。窓は閉まっていて、月の光だけが入ってくる。

部屋の真ん中に、足踏みオルガンが一台。

ペダルを踏んで、空気を送って鳴らす、古いやつです。自分のおばあちゃんの家にも、似たのがありました。

友達の一人が、ふざけて鍵盤を一個だけ押した。でも、音は鳴らない。

当たり前ですよね。ペダルを踏まないと、空気が入らないから鳴らない。へえ、こういう仕組みなんだ、くらいの話で、自分たちは音楽室を出ました。

廊下の途中まで来たときです。

後ろの音楽室から、音がした。

オルガンの音でした。低い音が、一つ。それも、ペダルを踏むときの、ふいごが空気を吸う、ふうっという音と一緒に。

四人とも、足が止まりました。誰も、あの部屋には残っていない。さっき全員で出たのは、はっきりしています。

一人が、懐中電灯を音楽室のほうに向けました。

扉は開けっ放しのままで、中には誰もいない。それでも、また一つ、低い音が鳴った。ペダルを踏む音と一緒に。

自分たちは、もう帰ろう、という話になりました。ただ、帰る前に、一人が、確かめると言って音楽室に戻ったんです。

自分も、ついていきました。残りの二人は、廊下で待っていた。

懐中電灯で、オルガンを照らしました。

鍵盤の上に、埃が厚く積もっている。さっき友達が一個だけ押した跡は、自分も覚えています。

でも、そのときは、指の跡が、いくつもありました。

鍵盤の埃の上に、たった今、誰かが押したみたいな、丸い指の跡が、いくつも。一つや二つじゃない。

さっき押したのは、一個だけです。それも、自分たちが見ている前で。

自分は、それ以上、何も考えたくなくて、友達の腕を引いて部屋を出ました。

あとは、ほとんど走るみたいにして、四人で校舎を出て、車に乗り込んだ。

帰りの車の中で、誰も、あの指の跡の話はしなかった。

あの音が何だったのか、指の跡が誰のものだったのか、今でも分かりません。

その廃校は、何年か後に取り壊されたと聞いた。確かめには、行っていない。

それから自分は、肝試しというものに、一度も行っていません。

こっちにも、もうひとつ

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