終電後の踏切で警報が鳴り、遮断機の向こうに人影が立っていた話

約4分
終電後の踏切で警報が鳴り、遮断機の向こうに人影が立っていた話
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Sさん(仮名・38歳女性・会社員)から、サイトの問い合わせフォームで届いた話。やりとりは3往復ほど。仮名と、場所をぼかすことを条件に、書かせてもらった。

どこの踏切かは伏せます。本人の希望なので。

私はそのとき、残業でかなり遅くなっていました。

プロジェクトの締め切り前で、終電を一本逃して。会社から駅まで歩く間に、もう日付は変わっていました。

いつもは電車で帰る駅の、ひとつ手前で降りることがあるんです。そっちのほうが、家までは少し近い。

そのルートに、古い踏切がひとつあります。

幅の狭い、片側一車線ぶんくらいの踏切。遮断機も、警報機も、見るからに古いやつ。

昼間は人も車もそこそこ通るんですけど、夜中はほとんど誰もいません。

その日は、私だけでした。

踏切の手前まで来て、私はスマホで時間を見ました。0時41分。

終電は、とっくに終わっている時間です。この路線、終電は0時前。

だから、渡るだけ。警報も鳴らないし、待つこともない。そう思って、足を踏み出しました。

そのときです。

カンカンカン、と、警報が鳴り出しました。

赤いランプが点いて、遮断機が、ゆっくり下りてくる。私の、目の前で。

私は反射的に、一歩下がりました。危ない、と思って。

でも、すぐに変だと気づきます。

終電は終わってる。こんな時間に、電車なんて来ないはずなんです。

遮断機は、もう下りきっていました。警報の音だけが、カンカンカン、と鳴り続けている。

線路の両側を、見ました。左も、右も、ライトひとつ見えない。

電車の音もしません。レールが鳴る、あの感じも、ない。

ただ警報だけが鳴って、遮断機が下りている。それだけ。

早く上がってほしくて、私は、線路の向こう側を、なんとなく見ていました。

向こう側にも、同じ遮断機があります。その、すぐ手前。

人が、立っていました。

こっちを向いて。私のほうを、まっすぐ。

暗くて、顔まではよく見えません。背格好も、男か女かも、はっきりしない。

ただ、こっちを向いて立っている、というのだけは、分かりました。

電車を待ってるのかな、と最初は思ったんです。でも、終電は終わってる。

それに、その人、ずっと動かないんです。私が見ている間、一度も。

声をかけようか、迷いました。やめました。

なんとなく、かけちゃいけない気がして。

どれくらい、そうしていたのか。たぶん、一分も経っていないと思います。

警報が、止まりました。カン、で、ふっと切れて。

赤いランプが消えて、遮断機が、上がっていきます。ゆっくり。

遮断機が完全に上がって、視界をさえぎるものが、なくなりました。

向こう側に、誰もいませんでした。

さっきまで立っていた場所に、何もない。人が歩いて去る、その姿も、見ていない。

私は、踏切を渡りませんでした。

渡れば、あの人が立っていた場所を、通ることになる。それが、どうしても嫌で。

来た道を、戻りました。遠回りして、別の道から帰った。

家に着いたのは、1時半を過ぎていました。

あれが何だったのか、私には分かりません。

終電が終わってるのに警報が鳴ったことも、向こうに立っていた人のことも。

電車が来ないのに遮断機が下りるなんて、踏切の故障かもしれない。人影も、見間違いかもしれない。

そう思おうとしました。でも、あの遮断機が上がった瞬間に、すっといなくなったのだけは、説明がつかない。

その踏切には、それから通っていません。残業で遅くなっても、遠回りして、別の道を使っています。

ひとつだけ、気になっていることがあります。

あの人、私と同じように、踏切が開くのを、待っていたのか。

それとも、開いたら、こっちに渡ってくるつもりだったのか。

そこだけは、考えないようにしています。

こっちにも、もうひとつ

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