休業日の薬歴に、誰も書いていない記録が一件あった話
Wさん(仮名・35歳女性・関西の調剤薬局で事務)からサイトの投稿フォームで届いた話。メールで4往復ほど追加取材させてもらった。仮名と店舗名を伏せる条件で承諾をいただいている。
職場の話です。怖い話かどうかは分かりません。
私は調剤薬局で事務をしてます。受付とレセプトの入力が主な仕事。勤めて六年になります。
うちは処方箋を受け付けると、患者さんごとに薬歴という記録を作ります。いつ何を出したか、どんな話をしたか。
気づいたのは、去年の秋でした。
月に一度くらいの頻度で来る患者さんがいます。七十代くらいの女性で、いつも同じ時間帯。処方元も同じ、内容もほぼ同じ。
その人の薬歴を開いたら、来局の記録が一つ多かったんです。
私が入力した覚えのない日付が挟まってました。前後の記録は私の入力で、間の一件だけ担当者の欄が空。
システムは担当者が自動で入ります。空になるのは、普通はありません。
薬剤師に聞きました。
その日は自分ではない、と全員が言いました。うちは常勤二人とパート一人で、シフトは全部残ってます。空欄の日付は、店の休業日でした。
処方箋の原本を探しました。
紙は日付順に綴じてあります。休業日のところに、その一枚だけ挟まってました。処方元の医院の印もある。
医院に問い合わせました。
その日は発行していない、との回答でした。ただ日付の書き間違いはたまにあるそうで、前日か翌日の分が誤記された可能性はある、と言われました。
それで説明はつきます。
医院が日付を間違えて、うちが休業日と気づかず受け付けた。担当者の欄は、手入力で修正したときに消えることがある。あり得ない話ではないです。
気になったのは、そこじゃなくて。
薬歴の本文でした。
その一件だけ、患者さんとのやりとりが書いてあるんです。膝の具合を聞いた、階段がつらいと言っていた、次回は杖のことを相談したいとのこと。
うちの薬歴で、そこまで細かく書く人はいません。
常勤の二人は簡潔に書きます。パートの人は本文を書きません。文体が、うちの誰のものでもなかった。
患者さんに直接聞いてみました。
杖の話をしたか、と。覚えがない、と言われました。膝は確かに悪いそうです。
その後は何も起きてません。
一件だけです。他の患者さんの記録も一年ぶん確認しましたけど、担当者が空の記録は他にありませんでした。
その患者さんは今も月に一度来ます。
私が受付をして、私が入力します。膝の話は、こちらからはしていません。
杖は、まだ持っていません。