会社のロッカー、毎朝出社すると鍵が開いている話
Aさん(仮名・32歳女性・東京都中央区の商社経理)から届いた話。毎朝出社して自分のロッカーを開けようとすると、ダイヤル錠が既に解錠されている。前夜の退社時、確実に施錠している。中身は減っていない。
ロッカーの仕様
Aさんの勤務先は東京都中央区八重洲のオフィスビル。経理部の女子更衣室には、社員用のロッカーが36基並ぶ。
ダイヤル錠、四桁。番号は入社時に各自が決め、引き継ぎはなし。Aさんの番号は誕生日の数字で、これも本人しか知らない。
毎朝の違和感
異変に気づいたのは2026年の3月頃。
朝8時45分、Aさんが更衣室で自分のロッカーに手をかけると、ダイヤルが既に解錠位置で止まっていた。
前夜、確かに施錠した記憶がある。中身は私服のジャケット、化粧ポーチ、財布、社員証。
確認したが、何ひとつ減っていない。
その日は気のせいだと思った。
翌朝も、開いていた。
翌々日も、開いていた。
同僚への確認
同じ更衣室を使う同僚に聞いてみた。
「鍵、勝手に触る人いる?」
みんな首を横に振った。
そもそも他人のロッカーを開ける理由がない。番号も共有していない。
清掃業者に確認した。
更衣室の清掃は週2回、夜間。ロッカーの扉に触れるルールはない。
夜勤の警備員にも確認した。
更衣室には記録上、誰も入っていない。
ロッカー裏のシール
違和感を覚えてから一ヶ月、Aさんは自分のロッカーの内側を改めて見た。
扉の裏、上の角に、剥がしかけの古いシールが貼られていた。
名前のシール。前任者のものらしかった。
『北村』。
苗字だけ、ボールペンで書かれている。
消えかけているが、確かに読める。
人事の知り合いに、北村という社員がいたかを聞いた。
「北村さんね、いたよ。経理にいた人。」
「いつ頃の方でしたっけ。」
「もう、3年くらい前かな。退職したのよ。」
そのあと
Aさんがそのロッカーを使い始めたのは、入社8年目に部署異動したタイミングだった。
2025年の春。
つまり、北村さんという人が退職してから、二年は空いていたことになる。
その間、ロッカーは誰も使っていない。
はずだった。
Aさんは人事に申し出て、ロッカーを別の番号に変更してもらった。
新しいロッカーは、毎朝、施錠されたままになっている。
古いロッカーは、今もそこにある。
担当者は今、誰もいない。