二年間、存在しない部屋番号に荷物を届けていた話

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二年間、存在しない部屋番号に荷物を届けていた話
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Tさん(仮名・33歳男性・宅配の配達員/勤続六年)からサイトの投稿フォームで届いた話。メールで4往復ほど追加取材させてもらった。仮名と担当エリアを伏せる条件で承諾をいただいている。

配達先の部屋番号の話です。ずっと気になってるんで、書いてみます。

僕は宅配の配達員です。担当は住宅街で、マンションと戸建てが混ざってるエリア。同じ区画を六年やってます。

その荷物は、週に一回来ます。

毎週水曜の午前。差出人はいつも同じで、法人ではなく個人名。梱包も同じで、六十サイズの段ボール。重さは一キロちょっと。

宛先も同じです。

エリア内の五階建てマンション。宛名は個人名で、部屋番号は五〇二。

二年くらい、毎週届けてました。

受け取るのは同じ人です。四十代くらいの男性で、いつも部屋の中から出てきます。判子ではなくサインで、名前は宛名と同じ。

やりとりは、ありがとうございます、くらい。

気づいたのは、去年の秋でした。

その日は代わりの人と二人で回ってました。新しく入った人に区画を教える日で、僕が助手席から説明する形。

そのマンションの前で、部屋番号の話になったんです。

五階は何部屋あるか、と聞かれました。

答えられませんでした。六年やってて、五〇二以外に五階へ行ったことがないんです。

エントランスの集合ポストを見ました。

五階のポストは、五〇一と五〇三の二つでした。

五〇二がありません。

並びも見ました。四階は四〇一、四〇二、四〇三の三つ。三階も三つ。二階と一階も三つずつ。五階だけ二つで、番号が飛んでる。

階段で上がりました。

五階の廊下には、扉が二つでした。手前が五〇一、奥が五〇三。あいだは壁です。給湯器の箱と、メーターの扉が付いてました。

五〇二の扉は、ありませんでした。

その日、荷物は持ってませんでした。水曜ではなかったんで。

翌週の水曜、荷物が来ました。

伝票を見ました。宛名も、部屋番号も、先週までと同じ。五〇二。

行きました。

エントランスでインターホンを押しました。五〇二の番号は、パネルに無いです。五〇一と五〇三の二つです。

押せませんでした。

五階まで上がって、壁の前に立ちました。給湯器の箱と、メーターの扉。

そこで、男性が出てきました。

五〇一の扉からです。いつもの人でした。四十代くらいで、顔は覚えてます。荷物を渡して、サインをもらいました。

名前は、宛名と同じでした。

部屋番号のことは聞きませんでした。聞く理由が無いんで。伝票通りの人が受け取ってるなら、それで完了です。

営業所で伝票を確認しました。

過去の記録も残ってます。二年ぶん、全部五〇二でした。差出人の欄も同じ。

住所は、そのマンションで合ってます。

登記のことは分かりません。部屋番号が変わったとか、二部屋を一つにしたとか、そういう話はあると思います。五〇一と五〇二をつないだなら、表示が片方だけ残るのも有り得るんで。

だから、たぶんそれです。

今も毎週届けてます。伝票は五〇二で、出てくるのは五〇一の扉から。サインは同じ名前。

壁のほうは、見ないようにしてます。

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