会社の同僚が毎日同じ場所に同じ姿勢で座っている話
目次
Fさん(仮名・37歳男性・愛知県のメーカー勤務)から届いた話。転職してきた40代男性の同僚が、毎日昼休みの後半、社員食堂横のロビーで、同じ場所、同じ姿勢で座っている経緯。
中途入社の同僚、転職3か月目
Fさんの会社に、半年前に中途入社した40代男性がいた。技術職、Fさんと同じ部署。物静かで、必要なこと以外あまり話さないタイプ。
転職3か月目に入った頃、Fさんは同僚の昼休みの過ごし方に、ある共通点があることに気付いた。
毎日昼12時45分、ロビーの同じ場所
毎日、昼休みの45分過ぎから1時の終わりまで、同僚は社員食堂横のロビーの一番奥の窓際の椅子に座っている。
姿勢も、いつも同じ。背筋を伸ばし、両手を膝の上、目を閉じている。15分間、ほぼ動かない。
最初は『寝ている』と思った
Fさんは最初、『仮眠を取っているのだろう』と思っていた。でも、姿勢が常に同じ、というのが、徐々に気になり始めた。
「腰を伸ばすとか、首をかしげるとか、寝ている人なら姿勢が変わるはず。でも、毎日完全に同じ。これは、何か別の何かをしているんじゃないか、と」
他の同僚に聞いてみた
Fさんは、別の同期に聞いてみた。同期も、『あの人、なんかの宗教的なことしてるんじゃない?』と笑っていた。
「冗談半分の話題だったけど、誰も本当の理由を知らない、という共通の空気だった」
飲み会で、本人に直接聞いた
ある夜、部署の歓送迎会で、Fさんはその同僚と隣の席になった。少し打ち解けた後、思い切って聞いてみた。
「『毎日、ロビーで同じ姿勢で座られてますよね。何かのお祈りですか?』と」
同僚は、少し笑って答えた。「瞑想です。前職が自衛官で、訓練で習った習慣を、20年続けています」
理由が分かって、見方が変わった
同僚は元・自衛官、退官後にメーカーに転職してきた。自衛隊時代に習った瞑想の習慣を、20年間、毎日昼休みの15分続けている。
「会話の中で、『瞑想は集中力の維持のために続けている、職場で目立たないようにしているつもりだったけど、目立ってたかな』と笑ってくれました」
見方が変わった後の3か月
それから3か月、Fさんはたまにロビーで瞑想中の同僚を見かけても、何も気にならなくなった。
「2か月、勝手に『この人なんか変だな』と思っていた時間が、5分の会話で解消されました。職場の人間関係って、こんな簡単に変わるんだ、と」
追加で聞いた話
取材のあと、Fさん自身もその瞑想の習慣に興味を持って、同僚に少し教わった、と連絡が来た。
「ランチのあと15分、椅子に座って目を閉じる、というだけのことなんですが、最初の3日は雑念だらけで全然集中できませんでした。同僚は『最初は誰もそう。続けることがすべて』と言ってくれました」
Fさんが瞑想を続けて2か月、午後の眠気と判断力の落ち込みが、明らかに改善した、と書いていた。
「自衛官時代の習慣だと聞いた時は、軍隊的なストイックさをイメージしていました。でも実際は、ただ静かに座る時間を確保する、というシンプルなことでした」
同僚と一緒にロビーで瞑想する日もあるが、声をかけ合うことはない、と。
「お互い目を閉じて、15分後にちょっと目を合わせて軽くうなずく。それだけの関係です。同僚は『これくらいの距離感が、たぶん長く続く』と言っていました」