アパートの隣室、毎晩2時45分に出ていく足音の話
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Tさん(仮名・31歳女性・茨城県の事務職)から届いた話。一人暮らしのアパートで、隣室の住人が毎晩2時45分に部屋を出ていく音を3か月間聞いた経緯。
引っ越し直後、初日の夜
Tさんは2025年9月、茨城県内のアパートに引っ越した。鉄骨2階建て、Tさんは1階の角部屋。
引っ越し初日の夜。Tさんが寝室で寝ようとした時、隣の部屋の方向から、玄関の扉が開く音、それから廊下を歩く足音、そして外の扉が閉まる音。時計を見ると、2時45分。
「最初の夜は、夜勤の人かな、ぐらいに思って、すぐ眠りました」
翌日も、翌々日も、同じ時間
翌日も、Tさんが眠りかけた時、隣室から同じ音。時計を確認したら、2時45分。
翌々日も、同じ。
「夜勤なら、出勤時間が決まっているのは普通。でも、毎日2時45分ぴったり、というのが、なんとなく気になり始めました」
1か月後、まだ続いている
引っ越しから1か月。Tさんは、隣室の住人と、廊下や駐車場で一度も会っていない。表札も出ていない。
「アパートの大家さんに、隣の人がどんな人か聞いてみたんです。『男性、30代、長く住んでる人ですよ』とだけ。それ以上は個人情報なので、と」
2か月目、足音のパターンに気付く
2か月目に入った頃、Tさんは、毎晩の足音のパターンが、ある程度決まっていることに気付いた。
「玄関の扉が開くのが2時45分。廊下を歩いて、外の扉が閉まるまで、いつも30秒から40秒。歩く速度も、ほぼ同じ。出ていった後、朝の6時45分に、同じ流れで帰ってくる」
つまり、外出時間はぴったり4時間。
少し怖くなった、夜眠れない日
2か月目の終わり頃、Tさんは少し怖くなった。
「4時間ぴったり外出、というのが、私の中で気持ち悪く膨らんでいった。コンビニのバイトでも、シフトはもう少しバラつくはずだから、と」
夜、2時45分が近づくと、緊張して眠れない日が増えた。
3か月目、引っ越し挨拶
3か月目に入った頃、隣室の住人が、初めてTさんの部屋に挨拶に来た。Tさんが先に引っ越したから、と先方が遅れて挨拶に来た形。
30代の男性、印象は普通の会社員風。手土産はクッキーの缶。
会話の中で、Tさんは思い切って聞いた。「もしかして、夜勤のお仕事ですか?2時45分に出かけられているので」
『コンビニ夜勤、4時間シフト固定』
男性の答えは、こうだった。
「最寄りのコンビニで、夜勤の4時間シフト。3時から7時です。ちょっと遠回りで歩いていくので、家を出るのが2時45分。雨の日も、雪の日も、シフト変えずに3年やっています」
Tさんは、説明を聞いて、自分の中で膨らませていた不安が、一気に解消した。
挨拶以降、足音は『あの人』に
それ以降、2時45分の足音は、Tさんにとって、『コンビニに出勤する隣の人』の音になった。
「不安だった3か月間が、たった5分の挨拶で全部解消したのが、自分でも不思議でした。怖いと感じていたのは、相手が見えない人だったから、というだけだったんだと思います」