空き家の実家、行かなかった月にいちばん電気を使っていた話
Sさん(仮名・45歳女性・東北の実家を管理、現在は仙台市内在住のパート勤務)からメールで届いた話。半年ほどかけて7往復ほど追加取材をさせてもらった。仮名と地名ぼかしを条件に承諾をいただいている。
実家の電気メーターの話です。怖い話なのかは分かってません。ただ数字が残っているので、書いておきたくて連絡しました。
母が亡くなったのは、四年前です。
父は先に亡くなってて、実家は空き家になりました。東北の農村部で、私は仙台に住んでます。車で一時間半くらい。
兄が一人いますけど、関東にいて、ほとんど来ません。
家は残すことにしました。
解体の費用が出せなかったのと、母の物がまだ片付いてなかったからです。私が月に一度、様子を見に行くことになりました。
電気は止めませんでした。
止めると換気扇も回らないし、冬に水道が凍ります。あと、真っ暗な家は傷むと聞いたんで。基本料金だけ払って、契約は残しました。
検針票は仙台の私の家に届きます。
空き家なので、使用量はほとんどゼロです。月に一桁キロワットアワー。冷蔵庫も止めてあるし、動いてるのは玄関の常夜灯くらいでした。
去年の四月から、数字が変わりました。
急にではないです。じわじわと。四月が十二、五月が十八、六月が二十四。
夏に向かって増えるのは、私も最初は気にしませんでした。
換気扇を回す時間を長くしたのは私だし、行ったときにエアコンを使うこともあります。月一回の滞在で数字が動くのは、おかしくない。
七月に、行けない月がありました。
私が体調を崩して、その月は一度も実家に行ってません。兄も行ってないです。確認しました。
その月の使用量は、三十一でした。
前月より増えてました。
電力会社に電話しました。
メーターの故障の可能性を聞いたら、点検に来てくれることになりました。来たのは翌月です。
メーターは正常でした。
点検の人が言うには、数値の出方に異常はない。ただ、この使い方だと何かが動いてる、と。ブレーカーを落として様子を見ましょう、と提案されました。
そこで困りました。
ブレーカーを落とすと換気扇が止まります。それは避けたかったんで、玄関の回路だけ残して、他を落としてもらいました。
九月の使用量は、七でした。
落とした分だけ、きれいに減ってました。
つまり、落とした回路のどこかで電気が使われてたということになります。
十月に実家へ行って、部屋を一つずつ見ました。
落としたのは居間と台所と、二階の二部屋。コンセントに何か挿さってないか確認しました。
居間のコンセントに、電気ポットが挿さってました。
母が使っていたやつでした。片付けの途中で、そのままになってたんだと思います。プラグは挿さったままでした。
スイッチは、切れてました。
保温のポットは、切れてれば電気はほとんど食いません。待機電力だけです。三十一キロワットアワーには、まったく届かない。
ほかには何もありませんでした。
冷蔵庫は電源から抜いてある。テレビも抜いてある。照明はスイッチが切れてました。
念のため、ポットは抜いて帰りました。
十一月の使用量は、六でした。
十二月も六。今年に入ってからも、六か七で落ち着いてます。
落としたままの回路は、まだ戻してません。
戻せば分かるのかもしれないですけど、また増えたときに理由が説明できないんで、そのままにしてます。冬は水道の元栓を閉めて対応してます。
兄には話しました。
検針票の数字を見せたら、しばらく黙ってから、家を売ろうか、と言いました。今までそういうことを言ったことはない人です。
理由は聞いてません。
母の物は、まだ半分くらい残ってます。
私が月に一度行って、少しずつ運び出してます。玄関の常夜灯は、今もつけたままにしてます。
つけておくと、外から見て人がいるように見えるので。