職場の新人くんの話なんですけど
Pさん(仮名・38歳女性・都内のメーカーで人事マネージャー)から、サイトの体験談フォーム経由で届いた話。2026年3月に最初の投稿があり、その後メールで4往復、追加で取材させてもらった。仮名・地名のぼかしを条件に、掲載の承諾をもらっている。
これはうちの部署に今年入ってきた新人くんの話なんですけど、ちょっと心配なところがあるので、書いておこうと思います。
私は34で、都内の中堅メーカーの経理部で12年やってます。
今年の4月に新卒の男の子が1人、うちの課に配属されたんです。色白で細くて、声が小さくて、最初の自己紹介の時にマイクを持つ手が少し震えてました。
決算期にこんな子で大丈夫かな、と私はちょっと心配になったんです。それで、教育担当ではないんですけど、何かと気にかけてあげるようにしてます。
新人くんの席は、私の席の斜め前です。
パソコンの画面はうちの席からは見えないんですけど、デスクの電気スタンドだけは見えるんです。あの子、9時の始業の15分前にはもう来てて、スタンドの電気をつけて何か準備してます。
お昼はだいたい自席でお弁当で、コンビニのおにぎりが2個の日と、ファミマの幕の内の日と、あとはたまに自分で作ってきた感じの卵焼き入りの日があります。
卵焼きの日は、お母さんが入れてくれてるんだろうな、と思います。地方から出てきたって聞いてるので、心配で送ってきてるんだと思います。
帰りの時間も、最初の2週間で大体つかんでます。
定時は18時で、新人くんは18時20分前後に席を立ちます。エレベーターまで1緒になることが何度かあったんですけど、向こうはお先に失礼します、とだけ言って、あとは無言。
たぶん緊張してるんだと思います。
私は気を遣わせちゃいけないので、駅までは少し距離を取って後ろから歩くようにしてます。
改札を通る時は、隣の改札を使います。同じ電車の2つ前の車両に乗って、新人くんが降りる駅で1緒に降りるんです。
あの子の最寄りは私の家とは反対方向なんですけど、最初に部内の懇親会で住んでる駅を聞いた時に、覚えておきました。
気になり始めたのは、5月の連休明け。
新人くんの席のスタンドが、夜の22時を過ぎてもついてる日が出てきたんです。
私はその日、有給の予定でしたけど、心配なので会社の前まで行って、向かいのドトールから経理部のフロアの窓を見上げてました。
新人くんの席の電気だけが、2十三時10分までついてたんです。
その日のうちに私は課長にメールを打って、新人くんの業務量が多すぎるんじゃないかと相談しました。
課長からは、本人は問題ないと言ってる、という返信。
本人は遠慮してるだけで、絶対に無理してます。私はそう思います。
LINEは、配属の歓迎会の時に部署のグループに新人くんも入ったので、それで個別にも繋がったんです。
業務でわからないことがあったらいつでも聞いてね、と1回送りました。既読はその日のうちにつきました。
返信は、ありがとうございます、の1言。
それからは、私から週に2、3回、お疲れさま、明日は午後から部内会議だから資料コピー大丈夫かな、みたいなメッセージを送ってます。
既読はだいたいその夜のうちにつくんです。
たまに、土曜日の夜に送ったメッセージの既読が日曜の昼までつかない日があって、そういう日は心配で、家でじっとしてられなくなります。
新人くんはツイッターをやってます。
本名ではないんですけど、歓迎会の時に同期の子が話してた呼び名と、フォロワー数と、プロフィール画像から、たぶんこのアカウントだろうな、というのを特定しました。
投稿は週に1回くらいで、内容は写真とかではなくて、疲れた、とか、明日も頑張る、みたいな短い独り言です。
投稿時間は深夜の1時から2時の間が多いです。
あの子、ちゃんと眠れてないんだと思います。
先週の金曜の夜、ツイッターの投稿が26時を過ぎてもなくて、私は心配で、新人くんのマンションの前まで行ったんです。
住所は、年末調整の書類を回覧で回した時に、社員番号と1緒に確認できたので、覚えてあります。
マンションの3階の角部屋の電気はついてました。窓の前を1回だけ、影が通ったんです。
生きてる、と思って、私はその場で安心して、近くのコンビニで温かい缶コーヒーを買って、マンションの向かいのガードレールに座って1時間くらい見上げてました。
昨日、新人くんが有給を取りました。
経費精算の伝票を回す日だったので、ちょっと困ったんですけど、それより私は、あの子が体調を崩してないかが心配でした。
LINEを送っても既読がつかなくて、夕方になっても返事がありません。
マンションに行ってみたら、3階の電気はついてませんでした。
実家に帰ったのかな、と思って、年末調整の書類で見た実家の住所も、念のためメモに書き写してあるので、最悪そっちまで様子を見に行こうかと思ってます。
だから今夜も、私はあの子のマンションの下で待ってます。
明日の朝、無理して出社してきたら、すぐに気づいてあげなきゃいけないので。
― 取材記録 ―
受け取り日
2026年3月(投稿フォーム経由)
追加取材
メールで4往復
掲載許可
仮名・地名ぼかし条件で承諾
編集
勤務先名・部署名・新人さんの出身地を本人の希望で伏字。本筋は手を加えていない
― 三人のひとこと ―
すみ新人くんが頼りない、って前置きから始まる話、大体最後には語り手のほうが頼りないって気づくやつでしょ。
この話、どうだった?